チョコレートは、食べればなくなります。けれど、その箱だけは、なぜか捨てられないことがあります。神戸で初めて開かれた「Chocolate Package Award 2026」は、その小さな違和感に光を当てる試みでした。味ではなく、包むものを評価する。そこには、チョコレート文化をもう一段深く見るための視点がありました。
神戸で「チョコの箱」が初めて評価された日
神戸市のフェリシモ本社「Stage Felissimo」で、初開催となる「Chocolate Package Award 2026」のアウォードセレモニーとトークイベントが行われました。
フェリシモ創立60周年を記念して創設されたこのアウォードは、チョコレートの“衣装”ともいえるパッケージに注目し、その文化的価値を評価するものです。
表彰式では、全国から寄せられた約98点の中から選ばれた6作品が発表されました。各賞の表彰状が授与され、大賞受賞者にはトロフィーも贈られました。
トークイベントで語られたチョコパッケージの奥深さ
表彰式のあとには、審査員を務めたチョコレートジャーナリストの市川歩美さんと、日本パッケージデザイン協会理事の三原美奈子さんによるトークイベントも行われました。
語られたのは、日本のチョコレートパッケージの現在地や、受賞作が持つ魅力について。
印象に残ったのは、パッケージが単なる保護材ではなく、感情を動かす装置として語られていたことです。パッケージは、ついて手に取ってみたくなるという期待感を高めてくれる役割も持っているとも。
また、日本ほどこんなに多様なチョコレートのパッケージが制作される国は他にはないとのこと。それは、四季を愛し、贈答習慣が根付く日本ならではの独自の文化なのではとも語られていました。
初代大賞は「ルル メリー ショコラサブレ」
初代大賞に選ばれたのは、株式会社メリーチョコレートカムパニーの「ルル メリー ショコラサブレ」です。
淡いブルーの箱に描かれた一輪の花。リボンを結んだ姿は、チョコレートというより、小さな贈り物そのものに見えます。それもそのはず、ブライダルにも贈れるチョコレートが欲しいという顧客の要望からこのデザインは生まれました。
ひとりずつにバラを贈る気持ちを込めて作られたパッケージだったのです。
審査員評では、「もらった人が贈り物をもらったように感じて本当にうれしくなるパッケージ」と評価されました。
6つの受賞作が示した「残したくなる理由」
今回の受賞作は、大賞を含めて6作品です。大賞以外の5作品も紹介します。
kiitosの「REPUBLIC OF COSTA RICA」は、鹿児島で作られていて、パッケージの形は桜島を表しています。コスタリカのカカオ豆でできたチョコレート。
「チョコラティーノ」は、カファレルらしいキャラクター缶。食べ終わったあとも残したくなる、缶という素材の強さがあります。
「山菓子 富士山(春)Mt.FUJI」は、箱を開けると風景が立ち上がるような構造でした。パッケージを開く行為そのものが、小さな鑑賞体験になっています。インバウンド受けしそうなパッケージ。
「イロドリチョコレート」は、色のグラデーションが目を引きます。まさに日本の四季を表した色。味を選ぶ前に、まず色を選んでいる。その色は味も表現しています。
「茶葉ショコラ」は、もはやパッケージというより茶器のような静かな佇まい。チョコレートを和の時間へ引き寄せる、落ち着いた存在感がありました。大事な方への贈答品にも良さそう。
どの作品にも共通していたのは、「食べる前」と「食べた後」の両方を考えていることです。
パッケージは入口であり、余韻でもある。
このアウォードは、そのことをはっきり見せてくれました。
「チョコの街 神戸」の新しい入口は生まれるか
神戸は、外から入ってきた文化を受け入れてきた街です。
そしてそれを、そのままではなく、暮らしの中に馴染む形に置き直してきました。
だからこの街では、「味」だけではなく、「どう包まれているか」という視点が自然に生まれます。
チョコレートは食べれば消えます。けれど、箱は残ります。
残ったものが記憶になり、記憶が文化になっていきます。
ここで、ひとつの違和感が残ります。
なぜ、このアワードはチョコレートそのものではなく、「箱」を評価するのでしょうか。
この場に並んでいたのは、味ではなく、消えたあとに残るものばかりでした。
このアワードは、チョコレートを評価する場というより、消えるものの周囲に残るものを見つめる場だったのかもしれません。
初開催はまだ小さな出来事です。
ですが、これが続いていくなら、「チョコの街 神戸」は、チョコレートの記憶を扱う街としての顔を新たに持つ可能性があります。
箱を捨てられなかったあの感覚に名前が与えられるとき、このアワードは、ひとつの文化として残っていくのかもしれません。











