新しい店ができることは、街では珍しくありません。
しかし、ときどき「新しい店」なのに、ずっと前からそこにあったように感じる場所があります。
神戸阪急にオープンしたアニエスベーカフェも、そのひとつでした。全国で5店舗目。東京でも京都でもなく、その次に神戸が選ばれた理由。
それは出店戦略というより、この街と40年以上続いてきた関係の中にありました。
神戸阪急にできた小さなパリの居場所
2026年4月28日、神戸阪急本館5階に アニエスベー カフェ がオープンしました。
東京・銀座、渋谷、京都伊勢丹、祇園に続く全国5店舗目となります。店内に入ると、壁に灯るネオンのお馴染みのロゴが目に入ります。
百貨店の中にありながら、この場所だけ少し時間がゆるんでいるようでした。本館5階にある買い物の途中に立ち寄る場所でありながら、少しだけ気持ちが止まる場所。
神戸の街には、昔からこういう余白があります。
喫茶店でもなく、ラウンジでもない。でも少しだけ居たくなる場所。このカフェは、その神戸の感覚に自然に馴染んでいるかのようです。
神戸限定メニューに見えた この街らしい編集
今回の神戸店では、神戸限定メニューも用意されています。
地元神戸の老舗 ユーハイム とコラボした「神戸牛のミートパイセット」(1,980円)。神戸牛のフィリングをバター香るパイ生地で包んでいます。
ナイフを入れるとサクッと層がほどけ、香りが立ち上がります。フランスのブランドに、神戸の味が入っている。この構造が、じつに神戸らしい。
神戸は昔から、外から来た文化をそのまま置くのではなく、自分たちの感覚で少しずつ編集してきました。
洋菓子文化もそうです。港から入った異国の菓子文化が、この街で育ち、日常の味になっていきました。
ユーハイムとの組み合わせも、その延長線にあります。
神戸限定の「バウムクーヘンのミニパフェ」(1,650円)にはユーハイムのバウムクーヘンが使われています。
カフェなのにシャンパンがある理由
メニューを見て少し目を引くのが、シャンパンです。
「Louis de Sacy “le point d’ironie”」ボトルで10,780円。
カフェとして見ると少し意外です。けれど、この一本がこの場所の性格をよく表しています。
ここは、ただコーヒーを飲む場所ではありません。少し特別な時間を受け止める場所です。
神戸には昔からそういう場所が多々あります。
ホテルラウンジ。
老舗喫茶。
バー。
日常の中に少しだけ非日常を差し込む場所。このカフェは、特別な時間を過ごすにもよさそうです。
なぜ神戸だったのか
今回の神戸での出店には、はっきりした理由があります。
アニエス・トゥルブレ 氏は、神戸についてこう語っています。
「神戸は私の大好きな街です」
人々が親切で優しかったこと。ショッピング、おいしい食べ物、人の温かさ。神戸の素朴さとアーティストたちの表現力。それらが忘れられないといいます。
そしてアニエス氏は1998年から神戸名誉市民(神戸大使)でもあります。
さらに関係はもっと古く、1984年には西日本初のブティックを神戸に出店しています。日本上陸の翌年でした。
つまり今回のカフェ出店は、新しい挑戦ではありません。
40年以上続く関係の続きです。神戸は、文化を消費する街ではなく、受け止める街です。
入ってきたものを、そのまま流行として終わらせない。暮らしの中に置き直して、自分たちの時間にしていく。
アニエスベーもまた、その時間の中に残り続けてきました。
今回できたカフェは、新しい店というより、神戸とブランドの関係が「食べる場所」として見える形になった記録なのかもしれません。
だから、この空間には最初から馴染んでいたような空気がありました。
神戸にアニエスベーカフェができた理由。
それは、新しい市場として選ばれたからではなく、この街がずっと文化を受け止めてきた場所だったからなのではないでしょうか。
店舗情報
アニエスベー カフェ 神戸阪急
オープン日:2026年4月28日
場所:神戸阪急 本館5階
営業時間:10:00〜20:00
ラストオーダー:フード19:00/ドリンク19:30
座席数:36席
予約不可
全館禁煙
一部テイクアウト可








