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神戸・鴨子ケ原の坂の上にある「鉄の教会」 神戸新生バプテスト教会を訪ねて

アート・音楽

鴨子ケ原の坂を上ると、住宅地の一角に透明な壁を持つ小さな教会が現れます。
神戸新生バプテスト教会。鉄板、ガラスブロック、コンクリートで構成された簡素な建物です。
その簡素さの中に、神戸の山麓に置かれた祈りの場所らしい、静かな強さがありました。

※この記事の写真は、神戸建築祭2026での公開時に撮影したものです。

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鴨子ケ原の坂の上にある小さな教会

鴨子ケ原の坂、左側の木々の中に教会が建てられている。

阪急御影駅や阪神御影駅からバスに乗り、鴨子ケ原へ向かいます。
神戸の街は、海から山へ向かって少しずつ高度を上げていきますが、このあたりまで来ると、街の音が少し遠くなります。

坂の途中から振り返ると、神戸の市街地と海が見えます。
港町でありながら、山の斜面に暮らしが続いている。
その神戸らしい地形の中に、神戸新生バプテスト教会はあります。

大きな尖塔があるわけではありません。
重厚な石造りでもありません。
正面に広がるのは、透明感のあるガラスブロックと、白い外壁です。

神戸建築祭2026で公開されたこの教会は、2004年に竣工した教会建築です。
設計は、鉄とガラスの組み合わせを得意とする建築家・木村博昭氏とKs Architects。地上1階、地下1階の小さな建物です。

「鉄の教会」とも呼ばれるこの建物は、住宅地の中で強く主張するというより、光を受けながら静かに立っていました。

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イタリアンガラスブロックの正面

イタリアンガラスでできた教会正面。

神戸新生バプテスト教会の第一印象は、正面のガラスブロックです。

イタリアンガラスブロックで構成された壁は、外から見ると半透明の膜のように見えます。
透明すぎず、閉じすぎてもいない。
外の光を受け、木の影を映しながら、内と外の境界をやわらかくしています。

教会建築というと、ステンドグラスの色彩を思い浮かべる人も多いかもしれません。しかしここにあるのは、色の物語ではなく、光そのものです。

ガラスブロックは、景色をはっきり見せません。
輪郭をぼかし、光だけを通します。
そのため、正面に立つと、建物の中に「見る場所」ではなく「静まる場所」があるように感じます。

この教会の生い立ちにも、その静けさは重なります。

神戸新生バプテスト教会の公式サイトによると、神戸新生伝道所は1988年から準備が始まり、1990年に神戸フレンドシップハウスのフロアを借りて礼拝を開始しました。その後、2003年にフレンドシップハウスの建物解体に伴い礼拝場所を失いましたが、地域に根ざした教会を夢見て、2004年より跡地に教会堂を建築し、同年12月26日から新会堂で礼拝を守っているとされています。

つまりこの建物は、最初から大きな施設として与えられたものではありません。

場所を失った人たちが、再び集まるためにつくった場所です。
その経緯を知ると、ガラスブロックの壁は、ただスタイリッシュな外観ではなく、外へ開きながらも、祈りの内側を守るための境界に見えてきます。

内部はとっても簡素、鉄と光だけが残る

教会内部はとても簡素な造り。

中に入ると、空間は驚くほど簡素です。

過剰な装飾はありません。
むしろ、ないことによって空間が整っています。

プロテスタント教会らしいシンプルさ、と言ってしまえばそれまでかもしれません。
けれど、実際に内部に立つと、その簡素さは単なる省略ではなく、かなり強い設計の意思に感じられます。

教会内から正面側を眺める。

目立つものを置かない。
視線を散らさない。
光と声が届くための空間にする。

礼拝堂の内部では、正面のガラスブロックが外の世界をぼかし、鉄の屋根が空間をすっと引き締めています。
外から見た白い柔らかさに対して、内側は思った以上に硬質です。

鉄、ガラス、コンクリート。
素材だけを並べると冷たく聞こえます。

しかしこの教会では、その冷たさが不思議と静けさに変わっています。
飾らないことが、ここでは祈りの形式になっているようでした。

鉄板を重ねただけの屋根

屋根は鉄板を重ね合わせて隙間を設けている。

見上げると、屋根の構造が印象に残ります。

鉄板を重ねたような屋根。
このような造りが、この建物の面白いところです。

さらに建物内部の周辺には外気を取り込む空気孔も設けています。その間には、わずかな隙間があります。
完全に閉じた箱ではなく、わずかに外とつながる仕組みです。
教会は内側に静まる場所でありながら、外の環境を完全には遮断していません。

コンクリートと鉄でできているのに、どこか呼吸しているように感じるのは、そのためかもしれません。

教会建築において大切なのは、豪華さではなく、どのように人を静かな状態へ導くかだと思います。
神戸新生バプテスト教会は、それを大きな装飾ではなく、素材と光と空気の扱いで実現しているように見えました。

地下へ降りる階段に見える建物の奥行き

地下に降りる階段。

礼拝堂の奥には、地下へ降りる階段があります。

上からのぞき込むと、コンクリートの壁に光が落ち、階段が静かに下へ続いていました。
地上の礼拝堂が光を受ける場所だとすれば、地下へ降りる階段は、建物の内側へ潜っていくような場所です。

神戸建築祭で公開されていたのは、礼拝堂と集会所でした。
この教会は地上1階、地下1階という小さな構成ですが、その中に「集まる」「祈る」「支える」という複数の機能が収められています。

表に見えるのは、透明なガラスブロックの礼拝堂。
しかし、その下には教会を日常的に支える場所があります。

神戸景観ポイント賞を受けた街角の祈りの形

神戸景観ポイント賞受賞のレリーフ。

外壁には、2007年の「神戸景観ポイント賞」を示すプレートがありました。

大きなランドマークではありません。
観光地として大勢が訪れる場所でもありません。
それでも、この教会は神戸の景観の中で評価されています。

その理由は、建物の派手さではなく、場所との関係にあるのだと思います。

そこに、鉄とガラスとコンクリートでできた小さな教会が置かれている。
透明でありながら、軽くはない。簡素でありながら、忘れがたい。

この建物は、神戸の山麓にふさわしい静けさを持っています。

坂を上り、光の壁に近づき、礼拝堂の中で鉄の屋根を見上げる。
その体験は、建築を見学するというより、街の中にある祈りの形を見つけることに近いものでした。

神戸新生バプテスト教会は、小さな建物です。
けれど、そこには「残された人たちが、もう一度集まる場所をつくる」という強い物語があります。

鉄板とガラスブロックとコンクリート。
簡素な素材の中に、静かな意志が宿っていました。

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