神戸・北野の坂の途中に、緑とクリーム色に塗り分けられた異人館があります。
神戸北野サッスーン邸は、1892年に貿易商デヴィッド・サッスーン氏の私邸として建てられた建物です。現在は結婚式場として利用され、通常は一般公開されていない空間が、神戸建築祭2026で公開されました。
建物、チャペル、披露宴会場、2階の部屋、ガーデンまで、北野らしい異人館の使われ方が残っていました。
※この記事の写真は、神戸建築祭2026での公開時に撮影したものです。
北野の坂に残る1892年築の異人館
神戸・北野の坂道を歩いていると、緑に囲まれた異人館が見えてきます。
神戸北野サッスーン邸です。
神戸建築祭2026で公開されたこの建物は、1892年、明治25年に貿易商デヴィッド・サッスーン氏の私邸として建てられた異人館です。現在は結婚式場として利用されており、神戸市指定歴史的建造物として紹介されています。建物は木造2階建てで、設計者・施工者は不明とされています。
外観でまず目に入るのは、緑とクリーム色のツートンに塗り分けられた外壁です。
北野の異人館にはそれぞれ個性がありますが、サッスーン邸はこの色づかいによって、やわらかく明るい印象を持っています。
また、ベランダ全面にガラス窓を入れた、神戸特有のコロニアル様式の建物としても紹介されています。建物の前には広いガーデンがあり、現在のウェディング会場としての使われ方ともよく結びついています。
観光施設として常時公開されている異人館とは異なり、現在は結婚式場として利用されている建物です。
そのため、神戸建築祭で内部を見学できる機会は、建物を知るうえで貴重な時間でした。
デヴィッド・サッスーン氏と神戸に残された私邸
サッスーン邸の名前は、デヴィッド・サッスーン氏に由来します。
館内の説明では、サッスーン氏は1910年にシリアのアレポで生まれたイスラエル人で、1937年に来日し、その後の生涯を日本で過ごした人物と紹介されていました。神戸に会社を設立し、主に繊維をアメリカ、ヨーロッパ、中近東へ輸出していたとされています。
建物自体は1892年築とされているため、現地説明の人物経歴と建物の来歴については、資料の記述を丁寧に読み分ける必要があります。神戸建築祭の公式情報では、この異人館は「貿易商デヴィッド・サッスーン氏の私邸」として紹介されています。
北野の異人館は、単に外国風の建物が並んでいる場所ではありません。
そこには、神戸が港町として多くの人と商いを受け入れてきた歴史があります。
サッスーン邸もまた、その流れの中にある建物です。
私邸として建てられ、時代を越えて残り、現在は結婚式場として使われている。
住まいだった建物が、いまは人生の節目を迎える場所になっているところに、この建物の現在の意味があります。
チャペルとして使われる異人館の一室
現在のサッスーン邸は、ウェディング会場として利用されています。
館内には、チャペルとして整えられた空間があります。
濃い木の腰壁、白い壁、シャンデリア、正面のステンドグラス風の窓。
大きな教会堂ではありませんが、異人館の一室を生かした落ち着いたチャペルです。
サッスーン邸の特徴は、建物全体を貸し切るように使える点にあります。
結婚式場として新しく作られた建物ではなく、明治期の異人館を現在の用途に合わせて使っているため、空間の中に住宅だった時代の雰囲気が残っています。
ここで印象的なのは、豪華さよりも距離の近さです。
参列者と新郎新婦の距離が近く、部屋そのものが式を包むような印象があります。
北野の異人館で結婚式を行うということは、単に「洋館で式を挙げる」ことではありません。
神戸に残された歴史的建造物の中に、現在の記憶を重ねることでもあります。
披露宴会場に残る住まいだった建物の明るさ
披露宴会場として使われている部屋には、白いテーブルクロス、花、キャンドル、窓からの光がありました。
現代的なホテルの宴会場とは違い、部屋のスケールは比較的落ち着いています。
窓が近く、壁や家具の距離も近い。
そのため、会場全体に邸宅らしい親密さがあります。
サッスーン邸は、もともと私邸として建てられた建物です。
そのため、現在の披露宴会場にも「人を迎える家」という感覚が残っています。
大人数を処理するための空間ではなく、招かれた人が部屋に入る。
そういう見え方をするのが、この建物の魅力です。
神戸建築祭の紹介では、建物の前に広いガーデンが広がることも特徴として挙げられています。
室内の披露宴会場と外のガーデンが近いことも、サッスーン邸のウェディング会場としての強みになっているように感じました。
2階の室内とガラス窓に囲まれたベランダ
2階へ上がると、いくつかの洋室があります。
アンティーク調の家具、ソファ、テーブル、明るい窓。
結婚式の控室や撮影場所として使われることも想像できます。
特に印象的だったのは、ガラス窓に囲まれたベランダです。
神戸建築祭の公式紹介にもあるように、ベランダ全面にガラス窓を入れたコロニアル様式は、神戸の異人館らしい特徴のひとつです。
窓の外にはガーデンが見えます。
室内にいながら、庭の緑を近くに感じられる構造です。
このベランダは、単なる通路ではありません。
外と内のあいだにある、半屋外のような場所です。
北野の異人館には、港町の暮らしと気候に合わせた工夫が見られます。
サッスーン邸のガラス窓に囲まれたベランダも、神戸の異人館らしい見どころとして押さえておきたい部分です。
緑とクリーム色の外壁そして100坪のガーデン
サッスーン邸の外観でもっとも記憶に残るのは、緑とクリーム色の外壁です。
木造の外壁に、淡いクリーム色と緑の縁取り。
北野の街並みによくなじみながら、建物単体としてもはっきりした印象を持っています。
建物の前には、約100坪とされるガーデンがあります。
白い椅子が並び、ガーデン挙式の会場としても使われる空間です。ウェディング情報サイトでも、屋内チャペルだけでなく、約100坪のガーデンでの挙式が可能と紹介されています。
ガーデンがあることで、この建物は外から眺める異人館ではなく、敷地全体で使う邸宅として見えてきます。
正面の建物。
室内のチャペル。
披露宴会場。
2階の部屋。
そして庭。
それぞれが別々に存在しているのではなく、結婚式という一日の流れの中でつながっています。
サッスーン邸は、明治期の異人館でありながら、現在も使われ続けている建物です。
保存されているだけではなく、ウェディングという用途を通じて、人が入り、写真が撮られ、記憶が増えていく。
そこに、この建物が今も北野に残る理由があるように感じました。











